ご  挨  拶
福島事故対策
代表  森重晴雄

 2022年5月に1号機格納容器内調査において、原子炉を支えるペデスタルの基礎が溶融しコンクリートが溶け鉄筋と鉄骨がむき出しになっている写真が公開されました。どなたもショックを受けられたでしょう。建築の地震評価からすると外観だけで全壊と判断できます。この上に載っている原子炉とともにペデスタルが地震によって倒壊する怖れがあります。外観性状だけでなく何ガルで原子炉が倒壊するか知る必要があります。
 私は加圧水型軽水炉(PWR)において原子力発電所の耐震構造(SC構造)を発案し、その研究を行い、原子力プラントの設計を行っています。同時に東電などが持つBWRプラントの重要支持構造物もSC化することを研究し、既に建設されていたこの1号機も偶然にも調査していました。ここまで損壊している原子炉及びペデスタルが簡単にモデル化でき何ガルで倒壊するか予測できます。本文で詳しく述べますが400ガルの地震で1号機の原子炉は倒壊します。規制委員会、東電は現在フクイチは900ガル検討用の地震でも耐えうるとしていました。事故当時から規制委員会も東電もこの基礎は耐震上問題となる侵食は起こっていないと過少評価していたことになります。私は原子炉倒壊の可能性を2015年に発表し国にも情報公開制度を使ってその危険性を指摘しています。

 私は耐震研究のあと四国電力活ノ方3号機建設現場に機器班長として3年あまり従事、帰任後、原子炉蓋、蒸気発生器などの主機取替をプロジェクトをしていました。さらに致死線量を発する原子炉内の炉心構造物を交換する方法を発案し、原子力発電技術機構(財)に派遣され国プロとして推進し、低線量で炉心交換を四国電力活ノ方1・2号機で実現しました。その後廃炉計画と長年、原発関連の仕事を主導していました。

  原発からの引退後、福島第一発電所の事故が発生し、事故3年後、現在に至るまで自主的に福島事故の原因や廃炉について研究しています。
 その研究過程で汚染水貯留タンクが基礎ボルトに締結されていないことを知り汚染水タンクの耐震解析を行ないました。汚染水貯留タンクは震度5強の地震でタンクは位置ずれることがわかりました。これを論文にして2016年アメリカ機械学会申請したところ受理され2017年にハワイ大会で発表しました。翌年原子力学会にも発表してい ます。東京電力は今年3月の地震で福島第一発電所が震度6弱の地震に見舞われ汚染水タンクの160基が位置ズレしたと発表しました。耐震評価の妥当性が実証されました。

 エネルギー資源学会が2022年4月26日,27日に主催した福島原子力発電所見学会に参加し東京電力から案内説明を受けました。以前から福島第一発電所の廃炉工法を抱いていたイメージを今回の見学会で確認できました。 2015年に検討していた原子炉倒壊の可能性と連鎖する被害についても今回改めて検討し論文としました。エネルギー資源学会は8月に東大駒場で大会が開催されます。本論文でペデスタルの耐震評価を行い現状必要とされる緊急対策及び現状技術で可能な福島第一原子力発電所の廃炉について提言しています。
 
 事故後11年経過し国費も20兆円以上が投じられていますが廃炉はほとんど進展せず、今回のように原子炉倒壊の危機に見舞われ混迷を深めるばかりです。調査も燃料デブリが注目されていますが、調査では燃料デブリは纏まって発見されていません。燃料デブリの性状も議論されていますが、燃料デブリは燃料ペレットを主体とするコンクリートの粘土、砂利、小石、鉄などの混合物で、その成分は場所によってまちまちです。燃料デブリを回収するクレーンが開発されていますが、燃料ペレットは約1cmの高さと円筒径で、比重が約10ありますので重さが8グラムあります。吊り能力が1グラムしかありませんので燃料ペレット1個さえ吊れません。これでは燃料デブリの調査事態も達成できません。単なる興味本位に終始とする研究が中心で廃炉の道筋が見えません。福島第一廃炉の体制はロボット開発や基礎研究者が主体であり、廃炉を実現できる体制ではありません。この際、体制、陣容を改める必要があります。新しい体制で緊急対策と廃炉を実現せねばなりません。

2022年6月20日
森重晴雄
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